平泉澄先生の、今を生きる私達に向けてのメッセージを紹介します←『物語 日本史』平泉澄著 (講談社学術文庫)


2年ほど前、ある人に、

『少年日本史』 平泉澄著

を勧められた。

早速購入。

ハードカバーを開いてすぐに出てくる、この「はしがき」に、深い感動を覚えました。

夏休み、日本の歴史を紐解く時間を持つのも、いいですよね。

是非、どうぞ。

『物語 日本史』講談社学術文庫としても、出ています。

『少年日本史』(平泉澄著/ 皇学館大学出版部)

はしがき

日本の少年よ!我が愛する皆さんよ!

私は今、皆さんに大切な贈物をしようとしているのだ。

それは何か?

則ちこの少年日本史だ。

これを贈ろうとする考えを、私は前々から抱いていた。

それは、二十年近く前に、ある中学校で、急に講演をした時に始まる。私は云った。「皆さん! 皆さんはお気の毒に、長く敵の占領下にあって、事実を事実として教えられることが許されていなかった。今や占領は終わった。重要な史実は、正しくこれを知らねばならぬ。」

こう云って、二、三の重要な歴史事実を説いた。生徒一千人。その千人の目、二千の瞳は、私が壇上にある間は、壇上の私に集中し、壇を降りた時には、壇下の私に集中した。

帰ろうとして外へ出た時、生徒は一斉に外へ出て私を取り巻いた。彼らは何も云わぬ。只穴のあくほど私を見つめるのみだ。私は自動車に乗った。車は生徒に取り巻かれた。

四、五人の生徒は、自動車の屋根の上へ這い上がってきた。車は暫く動きが取れなかった。

この感動以来、私は真実の歴史を、広く日本の少年、皆さんに語りたいと思い続けてきた。

機会は遂に到来した。今や私は、みなさんに語りたいと思うことを、少年日本史一冊にまとめ、これを皆さんに贈ることができた。

皆さん、どうかこれを受け、これを通読してください。

皆さんは日本人だ。

皆さんを生んだものは、日本の歴史だ。

その顔、その心、その言葉、それは皆幾百年前からの先祖より受けついだものだ。

それを正しく受けついだ者が、正しい日本人だ。

従って、正しい日本人となるためには、日本歴史の真実を知り、これを受けつがねばならぬ。

然るに、不幸にして、戦い敗れた後の我が國は、占領軍の干渉の為に、正しい歴史を教えることが許されなかった。

占領は足掛け八年にして解除せられた。

しかし歴史の学問は、占領下に大きく曲げられたままに、今日に至っている。

従って皆さんが、この少年日本史を読まれる時、それが一般に行われている書物と、大きく相違しているのに驚くであろう。

皆さんよ、人の尊いのは、それが誠実であるからだ。

誠実は一切の徳の根本だ。

その誠実を守るためには、非常な勇気を必要とするのだ。

世の中には、自分の欲の為に、事実を正しく見ることのできない人もあれば、世間の人々を恐れて、正しく事実を述べる勇気のない人も多い。

今後の日本を担うべき少年の皆さん、敗戦の汚辱を拭い去って、光に充ちた日本の再興に当たるべき皆さんは、何よりも先ず誠実でなければならぬ。

そして、その誠実を一生守り通す勇気を持たなければならぬ。

日本の歴史は、さような誠実と勇気の結晶だ。

凡そ不誠実なるもの、卑怯なるものは、歴史の組立に與ることはできない。

それは非歴史的なるもの、人體でいえば病菌だ。

病菌を自分自身であるかのような錯覚をいだいてはならぬ。

私は今、数え年七十六歳だ。従って、本書は、皆さんへの、最初の贈り物であって、同時に最後の贈り物となるであろう。

私は戦いで疲れきった心身に、ようやく残る全力をあげて、一気に之を書いた。その原稿一千枚。それを私は歴史的仮名遣いで書いた。

それが正しいと信ずるからだ。

しかし皆さんは學校で、現代仮名遣しか学んでいない。

よって時事通信社は、皆さんの読みやすいように現代仮名遣いに改めたいと希望した。

私は他日、日本が正しい日本にかえるとき、必ず歴史的仮名遣にかえるに違いないと信じつつ、しばらくその申し入れを容認した。

昭和四十五年秋九月  平泉澄


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