あはれともいふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな [四十五番歌:謙徳公]


哀れともいふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな

(謙徳公924-972/拾遺集)

★現代語訳★

お気の毒というべき人は思い浮かびません。むなしく死んでいくだけです。

★解説★

現代語に直訳すると何を言いたいのか理解するのが難しいですよね。

どういうことだろう?何を伝えたかったのだろう?

と頭の中に?がいっぱいつきます。

この歌には、まったく異なる2つの解説があるようです。

一つは、多くの本にみられる

「あなたにつれなくされた私の事をかわいそうだと同情してくれる人も思い浮かびません。

あなたに袖にされた私は片思いのままむなしく死んでいくのでしょう。」

もう一つは、『ねずさんの 日本の心で読み解く百人一首』にあるように、主語は相手の女性で「私と付き合わないなら、あなたは無駄に死んでいくだけのむなしい人生になってしまいますよ」という熱烈アプローチだろうという解釈です。

謙徳公とは

作者の謙徳公(けんとくこう)は亡くなった後に着けられた諡(おくりな)で、生前は藤原伊尹(これまさ)と言いました。

摂政、太政大臣まで栄達。宮中で和歌を専門に扱う「和歌所」の長官にもなった人で『後撰和歌集』で有名な「梨壷の五人」を取りまとめる仕事をしていたそうです。

48歳で亡くなりました。

詞書は

この歌の詞書(ことばがき)に

「もの言ひはべりける女の つれなくはべりて 更に逢はずはりけれ」

とあります。

これを素直に解釈すると、アプローチした女性がだんだん冷たくなってあってもくれなくなった寂しさを詠ったものと言えるかもしれません。そう、多くの本が解説しているものですね。

父 藤原師輔の篤実さと、『大鏡』にある藤原伊尹評と、謙徳公という諡(おくりな)から考えると

藤原伊尹(これまさ)の父は藤原師輔(もろすけ)といい、太政大臣でした。

たいそう篤実な人で、節約して堅実に生きるよう藤原伊尹に遺訓を残しています。

しかし、

『大鏡』には藤原伊尹が親の教えを守らず派手好きで贅沢を好んだという話が載っているそうです。

親の言いつけを守らなかったドラ息子?

かと思いきや、

亡くなった後の諡(おくりな)は、「謙徳」公。謙虚で徳がある人という大変名誉な名です。

これはいったいどういうことなのか?

『ねずさんの 日本の心で読み解く百人一首』では、このように解釈しています。

いくら質素にといわれても、要職を務めた父親の葬儀には、それなりの準備や豪華さは必要。それを贅沢といってしまっては公人としての様式美は保てないだろう、という気持ちから出たものだろう。と

私流に大雑把な言い方にしてしまって申し訳ないのですが、確かにこの解釈には説得力がありますよね。

今年の御代替わり大嘗殿を、伝統的な藁葺ではなくトタンにして経費を抑えるという方針に、心ある人たちが異議を唱えていました。伝統を守るという観点から、藁葺を踏襲して作らないと技術が消えてしまうし、そもそもの意味が失われてしまう、と。

これと同じような気持ちがあったのかもしれませんね。

地位に見合った葬儀をするべきである、というような。

藤原伊尹自身は、謙虚で徳のある生き方をした人なのではないでしょうか。

だからこそ、謙徳公という諡を贈られたのでしょう。

その藤原伊尹の若い時の歌だそうです。

歌の解釈についての深堀り考察は、また機会をみてできればいいな、と思います。

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ねずさんの 日本の心で読み解く「百人一首」

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