きみはぼくから姿を消した あるおだやかな秋の一日、、、:三谷晃一


文化というのは砂地にタネを蒔くような事業であるという詩を書いた三谷晃一先生の詩の中で、私が好きな詩をご紹介します。

「ある別れに」

きみはぼくから姿を消した。

あるおだやかな秋の一日。

どうしてそうなったかはわからない。

あるいはそうなることが

当然であったのか

それがことしの秋でなく

来年か再来年の秋でもよかったのではないかと思うのは

ぼくのおろかさなのだろう。

こんな日には

際限もなくひろい

樹木も人の影もない

赤茶けた大平原のはずれのようなところに

突兀(とっこつ)たる山がみえてくる。

そんなに高い山のようではないが

あそこに行けば

氷河がみられるということだ。

あるいはきみも

それを見にいったか。

ひょっとするといまごろ

危うくクレバスを避けて

傾斜をこえてゆくうしろ姿が

眺められるかもしれない。

こんな晴れた秋の日には

いつもなにかが

ぼくから姿を消す。

きみよ。

クレバスに呑まれるな。

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