家臣のなかに役立つ人材を多く見出し、外部から立派な師を迎えるべし:細井平洲


前回、江戸の儒学者 細井平洲の『嚶鳴館遺草』の中から、

主君に諫言する人物を育てる方法『嚶鳴館遺草』(細井平洲)

主君に諫言をする人物を育てる方法は「道理を知らせること」そのために学ぶことである。:『嚶鳴館遺草』細井平洲
西郷隆盛も尊敬していた 江戸時代の儒学者 細井平洲。 細井平洲が門人の藩主などとした問答や随筆をまとめた『嚶鳴館遺草(おうめい...

をご紹介しましたが、今回はその続きです。

人の心臓は体の主人、手足がなければ働けない

大きな眼で見れば、天地の不可思議な力やあり方も、聖徳太子をお雇いになって、その仕組みや道理を判らせられたと申すことができます。

天子は諸侯をお雇いになって天下をお治めになることができ、国主領主は家来諸役人を雇われて政(まつりごと)を行われ、侍は槍もちは仲間(ちゅうげん)を雇い主君への奉公を助けてもらっているのであります。

身近く言えば、人の心臓は身体の主人ともいうべきものでありますが、手足を雇って物をつかんだり、、さすったり、歩いたり、動いたりします。

その手足も大指だけでは働きが出来ず、中指小指の手伝いを雇わねば、撫でさすることもできません。

言ってみれば貴い方程雇いを多く使われているのであります。

昔から名高い武将も人を多く雇っている方が大身(たいしん)大家(たいけ)であります。

渡辺の綱や坂田の金時や武蔵坊弁慶のような勇者でも、一人では部隊の戦いはできません。

つまり、立派な人物を雇うことは、非常に良いことで決して恥辱というものではありません。

恐れながら、徳川家康公は六十四州の大小名を能くお雇いになられましたので、このように太平の世を築かれたのであります。

相州鍛治(そうしゅうかぢ)の刀は、相州の砥石(といし)で砥がなくては切れないということはありません。

この雇うとは、教える先生を一人雇うということであります。

立派な人物を師として臣下に置くことが大切

先生は一人では百人を教えられないということはありません。

一人に話される道理も、百人 千人に話される道理も、真理は一つで同じものであります。

出来れば一人でも多く集めて話を聞かせますと、聞く方は自分だけに言われていることとは思わず、たとえ身に覚えがある欠点を指摘されても恥ずかしいと顔を赤らめることもなく、穏やかな気持ちで聞いているうちに、人々は自然に思い当って、道理がわかってくるものであります。

主君に向かって意見をしている時には、主君だけに言っているように聞こえ、家来に向かって戒めている時には家来だけを注意しているようにみえますが、君臣一緒に先生の話を聞かれますと、主君の足らないところもあり、家来の足らないところもあり、上によいことは下のためにもよいということであり、下の者に良いことは上の立場の人にとっても良いことという道理が判って参ります。

しかし、そのためには、その師を尊ぶ道を心得ておかなければなりません。

家臣のなかに役立つ人材を多く見出し、外部から立派な師を迎えるべし

昔から師を尊び敬うことは非常に重要なことであります。

話してやる、聞いてやるというような粗末な心構えでは、何を聞いても身につきません。

ですから、昔の聖天子から近くの明君賢主に至るまで、師を尊び敬うことは、いつもご覧になっている御本にあるとおりであります。

これは中国の話だけではなく、我が国代々の朝廷でも、師とすべき臣下を尊ばれましたことは物語などでも書き伝え、ことのほか重要で大切なこととされてきました。

先ずこの点をしっかりとお考えになり、そのようなお考えのもとに、御家臣の中に役に立つ立派な人物を多く見出しになり、そのうえで外から立派な教師をお迎えになるべきことは、もうすまでもありません。

どんな立派な田畑でも、種を蒔かずによい収穫はできないものであります。

「『嚶鳴館遺草』つらつらふみ 君の巻」

細井平洲『嚶鳴館遺草』(渡邉五郎三郎先生による現代語訳)p37-42

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